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白熱電球 

1月はBLOG更新強化月間!!

お題wo次々ケリ倒していこうZE☆
略して「お題ケリ倒し企画☆」中!



白熱電球


家具が運び出された部屋は、同じ部屋だったと思えないくらい、広さが違って見える。
ヒロミは、バケツの中に雑巾を入れぐるぐると混ぜながら、そんな風に感じた。

試しに、部屋に向かって声を出してみる。
「あ!」という短い言葉だが、広がって響いているような気がした。

「ヒロミ~。ヒロミ。どうした?」

廊下から、父親の声がした。

「何でもない!」
「そうか。もうそっちは済んだのかい?」
「だいたい済んだよ~」
ヒロミは雑巾を絞ってバケツの縁にかけると、バケツを持って廊下に出た。

ここは良くある市営の団地だ。
2階建ての建屋で、四角い箱の様な、いわゆる長屋という形態の住宅だ。

ヒロミは幼い頃からここに住んでいたが、最近、両親が家を建てた。
父親の転勤が、この先ないと分かったからだそうだ。
家は父親の実家の隣に建てられた。
そう大きくはない家だが、昔から一軒家に憧れていたヒロミは、この引越しが楽しみで楽しみでならなかった。

荷物を全て運び出した後、鍵を渡しに行く前に少し掃除をした。
どうせ業者が入るのだろうが、簡単に掃いて、床と壁を雑巾で拭いた。

掃除道具を車に積み込んでいると、母親が段ボールから電球を取り出した。

「あれ。お母さん、それ、どうするの?」
「忘れてた。付け替えるのよ。はい」

母親は父親にそれを渡した。
「はいはい」
父親は掃除にも使っていた脚立を出してくると、玄関でそれを広げた。
そして、母親から電球を受け取ると、付け替え始めた。

「なんで新しいのにするの?」
「新しい家には別の電球が付いているからね。白熱電球は使わないんだ」
「その電球は使えないの?」
「そうだね。昔は白熱電球ばかりだったんだけどね」

白熱電球・・・。ヒロミは聞きなれないその言葉を、口の中で繰り返した。

「いいのよ。ここの電球はそろそろ切れる頃だったんだから。」
母親はそういって、空になった2つ入りの電球の箱を、小さく畳んだ。
「さ、行きましょ」

ヒロミは家を出る前に、もう一度玄関を振り返った。

狭くて、天井にシミがあって怖いし、畳と押入れが古い感じがするし、
それに押入れの中はすぐにカビが生えたり、臭いから嫌だった。

でも。それでも家族で過ごした思い出は沢山あって。
この玄関の灯りは、小さい頃から好きだったな。

もしかしたら、すぐに忘れてしまうのかも知れない。それでも。
ヒロミはここの灯りが毎日優しく迎え入れてくれていたのを、
暖かなオレンジ色の光に癒されていたのを、覚えていようと思った。



終わり


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