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スプーン 

ブログ更新強化月間です!

~お題ケリ倒し企画☆中~



お題4「スプーン


「お祖父ちゃん、どこ?」
「食器棚の中に、箸立てがあるけん」
「あっ・・ホントだ。あった」
「すまないけど、先の小さいのにしてくれるか」
「これね。あっ」

食器棚から小さなスプーンを取り出したヒロミは、小さく声を上げた。
子ども用のスプーンだ。
銀色をしていて、端っこはヒロミが大好きだった犬のキャラクターがついている。
アメリカの漫画が元になっているこのキャラクターは、
今ではテーマパークの主要キャラクターにもなるくらい、人気が定着している。
そういえば・・・。
ヒロミは思った。
私、このスプーンをよく使っていたっけ。

ヒロミは懐かしく思いながら、
その銀色の匙を、そっとお盆の上に乗せた。

ヒロミは祖父母の家に来ていた。
一緒には住んでいない。毎週、部活の終わった土曜の午後にここに来る。
部活が午後の場合は、終わってから。無い日は朝から。
それは、親との約束だった。

ヒロミは両親と共に、市街地に住んでいる。
祖父母の家は遠くはないが郊外のため、平日なかなか足は向けられなくなった。
中学に入ってからは特にそうだった。

「お祖母ちゃん。さつまいものスープだよ」

ヒロミは祖母の近くに座った。
ベットを少し起こして、祖母の顔を見た。
目が合うと祖母はにっこりと笑った。

ヒロミの両親は共働きで、長い休みの間、祖父母の家に来ることが多かった。
もっと言えば、ヒロミはおばあちゃんっ子だった。
祖母は一人っ子のヒロミを良くかわいがった。

半年前、祖母が倒れた。
一命は取り留めたものの、後遺症が残った。
祖父は自宅介護を選んだ。
祖父の選択に、負担を心配した両親は反対したが、ヒロミは賛成だった。
お祖母ちゃんは家が大好きで、いつも綺麗にしていた。
祖父母の家にはヒロミの場所があった。
本当のところ、施設がどんな場所なのかは分からない。
それに、時々はお世話になる。
でも、「自宅で。」と言った祖父は、祖母やヒロミの気持ちを大事にしてくれた、そんな気がした。

日曜は行事が入ることもあるので、
土曜は必ず来るようにした。土曜は用事を入れないようにして、
都合がつかない時は、日曜日に来た。

いつも、他愛ない話をして、おばあちゃんの身体を拭いたり、
髪を洗ったり、爪を切ったり、耳掃除したり、ゆっくり過ごす。
両親のどちらかが迎えに来るまで居ることもあるし、
ひとりで帰ることもある。

「じいさん、買い物行ってくるなあ」

ヒロミが祖母にひと匙ずつ、スープをあげていると、
祖父が近づいてきて言った。

「うん。気をつけて」

おじいちゃん、変わらないなあ。
祖父の背中を見送りながら、ヒロミは思った。
お祖父ちゃん、まだ元気だけど・・・。

「お祖母ちゃん、美味しい?」
「・・みぃ、・・・とぉ。」
祖母が喋れないなりに、声を出している。
ヒロミ、ありがとう・・。と、紡がれた様に聞こえた。

「いいよいいよ。お祖母ちゃん、その代わり早く元気になってね」
祖母は優しい顔で、ゆっくり頷いた。
祖母が前のように出来ないことは、お互い分かっている。
それでも、ヒロミはいつもこう言った。
お皿が空になったので、ヒロミはそっとスプーンを置いた。

幼い頃、熱が出ると、ここに来ることもあった。
その度、祖母はりんごを摩って食べさせてくれた。
あの頃はまだ、スプーンの持ち手の犬には色が付いていた。顔の白い部分は取れかけていたが、
耳の黒い部分はまだ残っていた。

いつの間にか、あまり熱が出ることもなくなったな。

ヒロミは立ち上がると、盆を片付ける為に、台所に向かった。
食器を洗っていると、食器洗いのやり方を祖母に教わったことを思い出した。
ここに立つと、今でも祖母が自分の横に来て手伝ってくれる・・・そんな気になる。

ヒロミは食器を水切りに入れた。ふきんを出すと、拭いて食器を元に戻す。
「またね」
ヒロミはスプーンを綺麗に拭いて、元の箸立てに戻した。

「お祖母ちゃん、一緒にテレビ見ようよ」

ヒロミはベットを少し倒すと、祖母の横の椅子に座った。
祖母は、やっぱり優しい顔をしていて、それはヒロミの大好きな祖母そのものだった。





終わり





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